EMG総合法律事務所: マンション管理Q&A

滞納管理費等の請求


27 不動産仮差押登記後の抵当権


  私どもの管理組合は、滞納管理費等の債権を保全するため、滞納者所有の部屋(マンション)について不動産仮差押を申し立て、仮差押えの登記も完了しました。しかし、その後、その不動産に抵当権が設定登記されました。
このような場合、仮差押えと抵当権とはどのような関係に立つのでしょうか?
よく、先取特権(区分所有法7条)は抵当権に劣後すると聞きますが、本件のように、抵当権設定登記より先に、仮差押えの登記がある場合はどうなのでしょうか?


  ご質問にお答えする前に、仮差押え手続について簡単に確認しておきましょう。

1 仮差押えについて 

一般的に、金銭債権を持っている債権者は、債務者に対して、民事訴訟等を提起して、判決(債務名義)を得て、債務者の財産に対して強制執行することができます。

しかし、強制執行するまでの間に、債務者の財産が散逸したりした場合には、せっかく債務名義を得ても差し押さえるべき財産がなくなっているということもあり得ます。 

そこで、債務者の財産を仮に差し押さえておく必要性が出てきます。

ここでは不動産仮差押えについて話を進めていきます。

管理組合が債権者となって、債務者(区分所有者)が所有する当該部屋(不動産)について仮差押えの申立てをし、裁判所によって仮差押命令が発令されると、当該部屋(不動産)に仮差押えの登記がなされます。

仮差押えの登記がなされた不動産について、債務者の処分(売買・贈与等の譲渡行為や質権・抵当権などの担保権設定行為等)は制限されます。ただし、その処分行為は絶対的に無効となるわけではなく、あくまでも仮差押えが本執行に移行した場合に効力が否定される関係にあります。手続相対効と呼ばれています。

2 ご質問のケースについて

具体化して考えてみましょう。

(1) 具体事例1(原則的事例)

@ 管理組合Aを債権者として、区分所有者Bの部屋(不動産)に仮差押え登記がなされたとします。

A 次に、当該部屋(不動産)に、Cを債権者とする抵当権が登記されたとします。

B その後、管理組合Aが、判決(債務名義)に基づき上記@の仮差押えの本執行として、当該部屋(不動産)の強制競売を申し立てたとします。

この場合、仮差押え登記(上記@)後の抵当権(上記A)は無視されて競売手続きが進行していくことになります。上記事実関係の下では、抵当権者Cは配当等を受けることができません。

(2)具体事例2(特殊事例)

@ 管理組合Aを債権者として、区分所有者Bの部屋(不動産)に仮差押え登記がなされたとします。

A 次に、当該部屋(不動産)に、Cを債権者とする抵当権が登記されたとします。

B 管理組合Aと債務者Bとの本案訴訟の決着がついていないときに、抵当権者がその抵当権(担保権)に基づき競売を申し立てた場合はどうなるのでしょうか?

抵当権者は競売を申し立てることができますが、管理組合の仮差押えについて決着がつかない限り、抵当権者に対する配当はなされません(手続きの進行が停止されるか、または配当が留保されます)。

抵当権者は、管理組合が本案訴訟で敗訴するか、仮差押えが取下げや取消しによって失効したときに限り、配当等を受けられることになります(民事執行法87条2項、188条)。

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