EMG総合法律事務所: マンション管理Q&A

総会(集会)の運営について


7 義務違反者に対する訴訟提起


  区分所有法57条の「共同の利益に反する行為の停止等の請求」については同条3項で「集会の決議により・・・訴訟を提起することができる。」と定められています。区分所有法58条の「使用禁止の請求」の訴えの集会の決議は、同条2項で「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数でする。」と定められています。
 これらの請求に関し、管理規約で、総会の決議を経なくとも(たとえば理事会決議のみで)理事長が提訴できると定めた場合、理事長はその管理規約の規定に基づき提訴できるのでしょうか?


  まず、区分所有法58条の使用禁止請求の訴訟については、同条2項の要件を緩和することはできません(本ホームページ、よくあるご質問 W-4特別多数決議事項について 参照)。
 つまり、使用禁止請求訴訟については、必ず総会の特別決議を経る必要があります。
 
 次に、区分所有法57条の行為停止等請求の訴訟については、原則として集会の決議(普通決議)が必要です。そもそも区分所有法57条1項で定める行為(いわゆる「共同利益背反行為」)とはいかなる行為を指すのか明確ではありません。そのため、管理組合(集会)において、当該行為が共同利益背反行為と評価できるのかまずは議論すべきでしょう。

 では、管理規約において禁止事項・禁止行為が具体的に定められ、それに違反した場合の措置規定として、理事長が「理事会の決議を経て、訴訟その他法的措置を追行できる」と定められている場合はどうでしょうか。
 この点について、必ず個別の集会決議を要すると解する見解もありますが、私見としては、禁止対象行為が具体的に定められていれば、当該管理規約に基づいて「理事会の決議を経て」提訴することができると考えます。ただし、禁止対象行為が抽象的に過ぎ、その抽象的な定めを根拠に提訴しようとするのであれば、区分所有法57条に定める要件(総会の普通決議)を満たした上で提訴すべきと考えます。

 なお、区分所有法に定める「使用禁止の請求」(58条)、「区分所有権の競売の請求」(59条)、「占有者に対する引渡し請求」(60条)については、必ず集会の特別決議が必要なので注意してください。

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